
今、日本と中国で何が起きているの?
2025年11月、日本と中国の間にこれまでにない緊張が走っています。
中国政府は自国民に「日本への渡航を控えるように」と警告を出し、日本産の水産物輸入も再び停止しました。観光業界では予約キャンセルが相次ぎ、約4000万円もの損失が出た企業もあると報道されています。
一体なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか?
この記事では、今回の日中関係悪化の経緯と背景を詳しく説明します。
すべては高市首相の「ある発言」から始まった
11月7日の国会答弁が引き金に
事の発端は、2025年11月7日の衆議院予算委員会でした。高市早苗首相が台湾をめぐる質問に答える中で、これまでの首相たちが避けてきた具体的な発言をしてしまったのです。
高市首相は「中国が台湾を軍艦で海上封鎖し、武力を使う場合、これは存立危機事態になり得る」と国会で明言しました。
「存立危機事態」って何?
存立危機事態とは、日本と仲の良い国が攻撃されて、それが原因で日本の存続が危うくなる事態のことです。
この事態が認められると、日本は集団的自衛権を使って、同盟国のアメリカと一緒に戦うことができるようになります。
つまり高市首相の発言は、「中国が台湾を攻撃したら、日本もアメリカと一緒に戦争に参加する可能性がある」と言ったに等しいのです。
なぜ中国はこんなに怒ったのか?
台湾は中国にとって「核心的利益」
中国政府は台湾を「中国の一部」だと考えています。これを中国は「核心的利益」と呼び、絶対に譲れない問題としています。
日本は1972年の日中共同声明で、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」という中国の立場を「理解し、尊重する」と表明しました。それ以来、歴代の日本の首相たちは台湾問題について「戦略的曖昧性」、つまりハッキリとした態度を示さない方針を取ってきました。
「手の内」を明かしてしまった高市首相
ところが今回、高市首相は具体的なケースを挙げて「存立危機事態になる」と明言しました。
これは初めて日本の「手の内」を明かしたことになります。
中国側から見ると、「日本が台湾問題に軍事介入する意思を表明した」「中国の核心的利益に公然と挑戦した」と受け取られてしまったのです。
中国の対抗措置とは?
中国政府は高市首相の発言に強く反発し、次々と対抗措置を取りました:
- 11月14日: 中国国民に日本への渡航自粛を呼びかけ
- 同時期: 日本産水産物の輸入規制を再強化
- 11月22日: 国連事務総長に書簡を送り、発言撤回を要求
- その他: 在大阪中国総領事がSNSで過激な投稿(後に削除)
これらの措置により、日本の観光業や水産業は大きな打撃を受けています。
実は想定外だった?高市首相の答弁
準備していなかった質問
興味深いことに、この発言は政府が事前に準備していたものではなかったことが分かっています。
質問したのは立憲民主党の岡田克也元外相でしたが、事前の質問通告には細かい内容が書かれていませんでした。
高市首相は当初、歴代政権の「答弁ライン」を守っていましたが、具体的な状況を問われると、原稿を見ることなく自分の考えを述べてしまったのです。
日本政府の対応:撤回するか、しないか?
2つのシナリオが浮上
現在、日本政府内では関係改善に向けて2つのシナリオが検討されていると報道されています:
シナリオ1: 事実上の撤回
高市首相が再び公の場で発言し、内容を「上書き」することで早期に軌道修正を図る案。
ただし、完全に撤回すると「台湾問題は存立危機事態にならない」と認めることになり、日本の安全保障上のリスクが大きいという問題があります。
シナリオ2: 冷却期間を置く
数カ月単位で時間を置き、双方の感情的な対立が沈静化するのを待つ案。
しかし、その間も中国の対抗措置が続き、日本経済に悪影響が及ぶ懸念があります。
高市首相は「撤回や取り消しをするつもりはない」とすでに国会で明言しており、事態の打開は簡単ではなさそうです。
なぜ台湾問題は日本に関係あるの?
地理的に非常に近い
台湾は日本からわずか約110kmの距離にあります。沖縄県の与那国島からは、台湾が肉眼で見えるほど近いのです。
シーレーンの要所
台湾周辺の海域は、日本の石油やガス、食料などを運ぶ重要な航路(シーレーン)になっています。
もし台湾有事が起きれば、この航路が使えなくなり、日本の経済や生活に大きな影響が出ます。
在日米軍基地の存在
日本には多くのアメリカ軍基地があります。もし台湾有事が起きた場合、アメリカ軍はこれらの基地から出撃する可能性が高く、日本も巻き込まれる可能性があるのです。
経済への影響は?
レアアースの供給不安
中国は日本が必要とするレアアース(希土類)の主要な輸入元です。
2025年4月にすでに輸出規制があり、今回の関係悪化でさらに供給が不安定になる懸念があります。
レアアースはスマートフォンや電気自動車など、最先端技術に欠かせない材料です。
供給が止まれば、日本の製造業は大混乱に陥ります。
観光・水産業への打撃
- 中国人観光客の減少
- 日本産水産物の輸出停止
- ビジネス交流の減少
これらにより、約900万人の日本人労働者が不安を感じる状況だと報道されています。
アメリカの反応は?
日本防衛の約束は「揺るがない」
アメリカ国務省は11月21日、「尖閣諸島を含む日本防衛の責務は揺るがない」との声明を発表しました。
日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを改めて強調し、中国をけん制する姿勢を示しました。
過去の日中対立との比較
2012年の尖閣国有化以来の緊張
今回の対立は、2012年に日本が尖閣諸島を国有化して以来の深刻な日中対立だと言われています。
当時も中国で大規模な反日デモが起き、日系企業が襲撃されるなどの事態が発生しました。
今回の特徴:「台湾」が焦点
ただし今回の特徴は、尖閣諸島ではなく台湾が焦点になっている点です。台湾は中国にとって尖閣以上に敏感な問題であり、それだけに中国の反応も強烈なのです。
これからどうなる?今後の見通し
長期化は避けられない?
日本政府関係者の多くは「関係悪化の長期化は避けられない」と見ています。
高市首相はすでに発言撤回のチャンスを逸したとの見方もあります。
G20での日中首脳会談は?
11月23日から開催されるG20サミット(ブラジル・リオデジャネイロ)で、高市首相と中国の習近平国家主席が接触するかが注目されていました。
しかし、関係悪化により正式な首脳会談は難しい状況です。
経済界からは懸念の声
日本の経済界からは「政治と経済は別」という声もありますが、中国との経済関係が深い企業は不安を募らせています。
私たちができることは?
正確な情報を得る
SNSなどでは誇張された情報や誤った情報が飛び交いがちです。信頼できるニュースソースから正確な情報を得ることが大切です。
冷静に考える
感情的にならず、なぜこのような事態になったのか、背景や歴史を理解する努力が必要です。
平和の大切さを考える
戦争は誰の利益にもなりません。平和的な対話と外交による問題解決の重要性を、改めて考える機会にしましょう。
まとめ:日中関係緊張の5つのポイント
- 発端: 11月7日の高市首相の「台湾有事は存立危機事態になり得る」という発言
- 中国の怒り: 歴代首相が避けてきた具体的発言をしたことで、「核心的利益」を侵されたと反発
- 対抗措置: 渡航自粛、水産物輸入規制など、経済にも影響
- 撤回困難: 安全保障上の理由から簡単に撤回できず、長期化の可能性
- 広範な影響: 観光、貿易、製造業など、私たちの生活にも影響が及ぶ可能性
おわりに
2025年11月の日中関係緊張は、一つの発言から始まった外交問題が、いかに大きな影響を及ぼすかを示しています。
台湾問題という複雑で敏感な問題に、日本がどう向き合うべきか。私たち一人ひとりが考えるべきテーマです。
今後の展開から目が離せません。この記事が、複雑な国際情勢を理解する一助となれば幸いです。
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